先週、鳥戸鐘沢からの返りに観光センターから少し下ったところで、早戸川左岸に３段の棚で注入してくる沢を見つけた。日が西に傾き、陰になっているので道路からは棚があるのは分ったが、実際に近くに行かず確認は出来ていない。今週はそこに行くこととする。
先週に見つけた道標の入り口から、釣り人によって良く踏まれた路を河原に降り、対岸にすぐ渡ろうとした。でも、すってんてんでフラットシューズ状態になってしまった運動靴では、つるりと滑って水の中に飛び込んでしまいそうで一歩目が踏み切れない。かといって、この冷たい水の中、じゃぶじゃぶしてまで渡る意気地もない。川下に暫く歩いて、ようやく渡れそうな場所を見つけて、エイヤと飛び石を伝う。そこから藪の混じった側壁を、そこかしこにいる渓流釣りの人の『なにやっているの あの人』という冷ややかな目を背後に感じながら、灌木を伝ってトラバースして、最初の渡渉ポイントの対岸にたどり着く。そこから上流も、何カ所か飛び石を伝う場面が出てきた。暫く歩くと、右側から小さな沢が小さな棚状で合流してくる。
『ここはなんていう沢ですか』
『そんなことおりゃ知らねえよ』と、おじさんが答える。
すぐ奥に、小さな棚が見えるが、想像していたよりも落差が小さな棚であった。やはり夕日の、かげった光線で覗いた事もあって、前回見えたときは大きく感じてしまったようだ。でも、大きな釜を持っているし、側壁はかぶっていて、そばに行くには水の中に入らないと、たどり着けそうもない。左岸に踏み後があり、そこの木を伝って行くと、棚を俯瞰するのにちょうど良い場所にでる。
ゴルジュ状の中に３つの棚（１．５ｍ、４ｍ、４ｍ位 写真）があり、いずれも落差はごく少ないが、直登するならば、深い釜を泳ぎ、流れの中を水中呼吸器を付けて登る覚悟が必要だ。技術的にも、オーバーハングしているようで困難と見えた。小さいけれど、白昼のこの時間でも薄暗い中に浮かんで見ると大きく見える棚である。そのまま踏み後をたどり、先ほどの棚を眼下に進むと、傾斜の少ない河原になる。炭焼き小屋の後と思われる窪地が散在している。なぜか、オートバイが一台河原に埋もれかかっている。こんな所まで誰か持ってきて捨てたんだろうか。２０分も河原を歩くと、小さなゴルジュ状になり１ｍ、１．５ｍの小さな棚がかかり、その奧に約４ｍの棚がかかる。４ｍの棚も一歩が出れば登れそうな傾斜だが、とっかかりが少なく、やはり勇気がでなくて左岸をまく。巻き路はかなり傾斜のきつく、岩が露出して、その上に砂がかぶっているような、いやな巻き路になる。右岸を巻いた方が易しそうである。この上を暫く歩くと、やがて石積みの堰堤が出てくる。これを越すと、更に堰堤となり、「やれやれ」とのっこすと目の前が大きく開け、奧野林道の終点となる。そこからは見渡す限り、コンクリート製の砂防ダムだらけの人工的度１００％のまことに山の自然にふさわしい場所となる。こんな景色を目の当たりにすると、この沢を、更に、上部に遡行しようなんて気持ちは、すっ飛んでしまう。止めた・やめた・やめだ。奧野林道は、大平から更に、この奧にある伝動にいく水平歩道を整備したものだという。昭和４１年に発行されたガイドブックには廃道と書いて有った記憶があるけど、この道をたどれるのではと考えて、そこらしきところを進むが、小さな沢を越したところで、まったく先がわからなっくなってしまった。分からなくなったところから下ると、先ほど登ってきた沢に自然と戻る。
この沢のあたりに、入り口の道標にあったように、大平に行く山道があったはずだと炭焼きゴヤの当たりから左岸の尾根に登って下ると、踏み後は、かすかにあるが山道というレベルでも無く、最後は藪を伝って早戸川の河原に達する。早戸川の和達は、往路で渡るのをためらった飛び石を悠々と渡ることが出来た。
（悠々と渡ることが出来るのは、水の少ない限られた時期のみ）
結局、この沢は、入り口の小さな３段の棚以外には、見るべき物は少なく、他の沢に来たついで、にこの入り口の棚が登れるか冷やかしにくる沢である。
後日、水沢系統の見回りの際、この奧野林道をたどってみた。先ほどの奧野林道を３０分も下ると大平（キャンプ場は１９９８年に廃止）に出ることができた。ここまでは舗装道路である。大平は、神社の小さな鳥居だけが木々の間に残っている。昔はここに集落があったのだろうか。キャンプ場も廃止され、静かな木々のこもれ日をじっと眺めていると、何かしら懐かしい場所である。（水沢林道からの分岐部分に車止めのゲートが設置されているので、自転車は大丈夫だが一般車は入れない。ゲートから徒歩１時間もあれば大平まで付く）
ここ大平から、広い砂利道を詰めると眼下に早戸川、対岸に本間沢を見ながら大きく尾根を巻いて先ほどの奧野林道終点にでる。
水沢系統には、めぼしい沢は見いだせなかった。
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